listen こえびメモ

リスン・デザイン こえびのブログ

日々感じていることをつらつらと書きます。

光に近づくほど影は濃くなり

 

以前はできなかったことが

すこしずつ

できるようになってきている

 

それは

調べたらわかることを誰かに教えてもらうことだったり

バスを一本乗り過ごしても洗濯物を干すことだったり

人の親切を素直に喜ぶことだったりする

 

 

 

 

 

そして

以前は当たり前のようにできていたことが

ちっとも

できなくなっていることに気づく

 

それは

年賀状の返事を出せなくなったことだったり

自分に嘘がつけなくなったことだったり

ここぞというときに頑張れなくなってきたことだったりする

 

 

 

 

 

 

ある日はそれをうれしく思い

ある日はそれを恐ろしく思いながら

 

肯定と後悔を繰り返して

すこしずつすこしずつ

わたしは前とは違う場所へ

進もうとしている

 

 

 

 

 

ようやくここまで来たんだなという気持ちと

こんなところまで来てしまったんだなという気持ち

 

 

 

 

 

閉じたまぶた越しに

光が近づいてきているのを感じる

 

背中にはくっきりと濃い影が

おんぶをするように張り付いている

 

過去に戻りたくはない

それでも

光を直視するのには

すこし覚悟がいる

 

 

 

 

 

 

 

こんなに明るい場所で

わたしは形をとどめていられるだろうか

 

こわくて

こわくて

消えてしまいたくなる

 

いっそ春の日の

雪だるまのように

誰にも気づかれずに

 

 

 

 

 

 

光はどうしてこんなに怖いのだろう

なぜ幸せになることに

こんなに抵抗があるのだろう

 

わからない

 

 

 

 

 

 

 

 

だいじょうぶ

過去の自分とさよならするんじゃない

愛おしいたいせつな暗闇を

ぜんぶ無駄だったと、切り捨てるのでもない

 

 

 

 

 

ボートの中にはたくさんのわたしがいる

耳の聞こえないわたし

ずっと眠っているわたし

何も力のないわたし

 

 

地続きになっている

今、この瞬間を辿っていくとき

無数に存在する、過去、のわたしが

それぞれの不器用さで

一生懸命生きていたことを知る

 

 

どうして嫌うことができるだろう

 

 

もう

ひとりで漕ぎ続けなくてもいいんだよ

 

「一緒にいこうね」

 

わたしたちはボートの中で手をつなぎ

みんなでオールを漕ぎ始める

 

 

 

そうだね

みんなで漕いだら

早いよね

怖くないよね

 

 

 

 

 

 

 

 

光に近づくほど

影は濃くなり

 

近づくほど

離れてしまいたくなり

 

 

 

 

 

 

 

それでも

わたしは光を見つめることをやめない

 

遠い昔

はるか何光年の彼方にある

いつかのあの子を

ボートに乗せて

 

暗闇のトンネルを抜けて

 

光の差す場所へ

連れて行ってあげたいから

 

 

 

 

 

 

わたしは光を

見つめ続ける