長い時間をかけて
心と向き合ってきた
自分のなかに起きたことを
なんとか書き残しておきたいのだけど
わたしというパーソナリティにおいて
それがあまりにも本質的なことなので
とても抵抗が強いのだ
向かい風の中を進むみたいに
なかなかわたし自身も
ほんとうの感情に
たどり着けない
だけどそれでも
こうして
絞りだすように
言葉を紡いでいくことが
今のわたしにとって
たいせつなプロセスなのだと思う
わたしはちゃんと
熱いものの熱さを
冷たいものの冷たさを
知っているはずだった
分厚いビニール手袋ごしに
伝わってくる熱さを
「そうか、これが熱いってことか」
と
手袋をはずして
素手で世界にふれたとき
わたしはずっと
ほんとうの熱さを知らなかったことに
気がついた
わたしはなにも知らなかったのだ
そう
「わたしは
なにも
知らなかった」
硬いさなぎから
出てきた昆虫は
視界いっぱいの世界を
どんなふうに吸い込んでいく
わたしは知りたい
今まで知らなかったことを
わたしは知りたい
知ったつもりでいたことの
ほんとうの美しさを
わたしは知りたい
閉じてしまった細胞を
ひとつずつ開いていくように
世界がこんなにも
あざやかで
こまやかで
おおきく
うつくしいことを
わたしは知りたい
胸いっぱいに吸い込んで
わたしのこころで
味わいたい
