こんな夢を見た。
だれかから逃げている。
敵はすぐそばに迫っている。
見つからないように、地下からいくのがいいだろう。
リーダーである父の指示で、わたしたちは湘南新宿ライン?の線路を、3人乗りの透明なカプセル状のスクーターで進んでいくことにした。
線路というわりにここはどう考えてもどこかの建物の非常用通路のような狭さで、もし今このスクーターが故障してしまったら、我々全員オサラバだ。
まるでスパイものの映画のような緊張感である。
到着した駅には多くの人が行き交っており、身を隠すのにはちょうどよかった。
いつのまにか一人になっていて、駅に置いてある鏡の中に自分の姿が写っている。
髪の毛がとても短い。
あれ、わたしいつ髪の毛を切ったんだろう?
ホテルにたどり着き、大きな湯船に浸かっていると、窓の外から騒がしい音が聞こえてきた。
まずい、奴らだ!
下着姿のまま外へと飛び出す。
都会のネオンの中、素足でアスファルトを走り、螺旋階段を駆け下りる。
すれ違う人々は、わたしに気付いて見ないふりをする。
走っている自分の姿を、別アングルからカメラが捉えている。
自分はオレンジ色の上下の下着を身につけているのだが、デザインがイマイチ気に入らない。
ああ、どうしてこれにしたのだろう。
(逃げているわりにずいぶん余裕だ)
必死で走り続けていると、踏切に出た。
遮断機が降りているが、反対側にチェーンソーを持った婦人警官がいる。
きっとあいつだ。
見つかった!
いつのまにかそばにいた弟が低い声でささやく。
姉ちゃん、やべーぞ!
身をひるがえして、公園の中に入る。
手すりの先は絶壁になっていて、ここから飛び降りるしかないだろう。
後ろに女が迫ってくるのを感じる。
えい!
と、飛び込む。
ヒュッ
と落下する時の苦手な感触がお尻からあがってきて
逆さまになった視界から、女が手すりのところで立ち尽くしているのが見える。
まるで飛行機から落っこちたような高さで
針葉樹の色の濃い木々の塊が、
近づいては視界から消えていく。
どうせ現実じゃないのだから
気持ちよくなりたい
そう思ったわたしは、全身の力を抜いて
流れていく景色をストンと落ちながら
空中をおおきく搔く
搔いた方向に空気の流れができ
身体がふわっと浮く
下の方向におおきく手を動かすと
身体が上に浮かぶのがわかった
周囲を見渡すと
おおきな白い鳥が立派な翼を傾けて
一緒に空を飛んでいる
これはきっと弟だろう
視界には美しい金色の花屏風と
朱色と黒の極彩色
そうかこれは錦鯉か
走馬灯のようにめまぐるしく
下から上へとイメージは去っていき
わたしは諦めたような心地よさで
どこまでも落下していく