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リスン・デザイン こえびのブログ

日々感じていることをつらつらと書きます。

コーヒーの中にほどけてゆく

 

ぼんやりして

頭がうごかない

 

はやく世界に

ついていかなくちゃ

と思うのだが

 

なにが起きているのか

なんだかよく

わからないのだ

 

 

 

 

 

 

いま

あたたかいコーヒーが

運ばれてきて

 

ぼんやりと動けないまま

じいと見つめている

 

ふわりと湯気がたつ

 

その奥の

濃いブラウンの水面を

すべるように

 

あたたかな油の膜が

マーブル模様を描いて

踊っている

 

 

 

 

 

ホットコーヒーの湯気の奥に

こんな景色があることを

わたしは今まで

見たことがなかった

 

こんなに静かに

コーヒーの中に

入ったことがなかった

 

 

 

 

 

 

わあ、すごい

と思ったら

 

子どもたちと

遊んだことを思い出した

 

 

 

 

子どもはいい

 

大人の時間軸や

大人の世界を

ぜんぶ吹っ飛ばしてくれるから

 

今この瞬間だけを

駆け抜けていく

その鮮やかさが

 

わたしを

子どもの世界に

ぎゅうと引き戻してくれる

 

それはひとつの救いだった

 

子どもみたいに走って

すべり台を滑った

 

あの景色を思い出したら

涙が出た

 

 

 

 

 

いまひとり

あたたかいコーヒーと一緒に

心がこぼれ落ちてゆく

 

わたしはほんとうは

ずっと

泣きたかったのだ

 

いまこの瞬間まで

そのことがわからなかった

 

 

 

 

 

 

テレビは怖かった

調べても調べても調べても

なにもわからないことが

 

人々が

こころが

世界そのものが

怖かった

 

このあたたかな空間に

スッとナイフが入り

ふとした拍子に

向こう側へと

めくれてしまう気がして

 

 

 

 

 

 

大人のままにいることは

とうにキャパオーバーで

わたしは苦しかった

 

ぱんぱんになった

風船がしぼんでいくように

 

コーヒーの中に

わたしの身体が

ほどけていく