ゆうべ
ひとりで歩いているとき
涙がとまらなくなった
悲しいのじゃない
嬉しいのでもない
わたしは
どうして泣いているのか
わからない
わたしを抱きしめて
温泉みたいだね
と言った
きみのあたたかさを
思い出す
あたたかな
特等席の
つめたい氷が
溶けていくみたいに
ぽとり
ぽとりと
地面に落ちて
水たまりの海になる
わたしは
おどろいて
動けないまま
ただ足元に
小さな海が
ひろがっていくのを
見つめている