今朝ものすごい物音と
人の気配で目が覚めた
ガラッと窓を開けたら1m先の庭師のおっちゃんと目があって
わたしがいたことにびっくりしたのか
少しだけ音が小さくなった。。
そしたら知らない番号から電話がかかってきて
「あら、こえびすさん?」
おばあちゃんの声がする
「ごめんなさいね、突然お電話差し上げて。大家です。
今朝からお庭を剪定していただいているの。煩かったかしらね」
(はい、めちゃくちゃうるさかったです)
!わたしが会いたかった大家さんだ!
入居条件がやたらと厳しかったので、きっと癖のある方だと思っていたら、とても上品なおばあさんだった。
歩いて数十メートルの大家さんのお宅には、とても大きな木が生えていて、まるでジブリのようなのだった。昔からあるお宅なのよ、とご近所のマダムが教えてくれた。
うちのアパートには、その面積に似つかわしくないくらい、とても大きくて立派な木がたくさん生えている。隣の屋根よりも背が高いのもいる。
こういう樹木はどこかでバッサリ短く斬られていたりするものなのに、一度もそういうことをされたことがなさそうだ。
柿の木に至っては、枝がそっくり隣のお宅に入り込んでしまっている。つまりこの柿の木はお隣のものでもあるということだ。
そういうのも含めて、愛情をかけられている場所だなと思った。
そこが気に入った。
「うちの主人が木が好きでね。ここは高台だからすくすく大きくなっちゃうの」
「わたしも木が好きなので嬉しいです」
「あらよかった。そういう人に入って欲しかったから。
このアパートは、合う人にだけ、入って欲しいの。年寄りですからね。誰でもいいわけじゃあないいんですよ。だったら空いていたほうがいいの」
めずらしいことをおっしゃる大家さんだ。
はじめてここに内覧に来たとき、まるでこのアパートだけ別世界にタイムスリップしたみたいにあたたかくて静かで丁寧で、まだ一軒めだったけど「あ、たぶんここだな」と予感した。
お風呂はバランス釜だし、ドアもぼろぼろだし、鬱蒼としているけど、
よく見ると丁寧に手入れされているし、むやみに変な壁紙に張り替えたりもしていないし、
もともとの造作や雰囲気を壊さないように、繊細なバランスを保っている。
場所も家も、なにか守られている感じがしたんだろう。
わたしがここを気に入った理由が、なんとなくわかってきた^^
「ところで大家さん。。勝手に、お庭にネギを植えてしまったんですけれども。。ごめんなさい!」
ほんとうはもっといろいろ植えたかったけど、大家さんにばれたら怒られるかもと思ったのだ。
ドキドキして打ち明けたら
「あはは、あらやだ、お庭なんてあんな狭いところ!なんでもお好きに植えてちょうだい」
やったーー!!
電話を切ったあと、嬉しくて小躍りする。
あら、なにを植えようかしら。
上品なマダムとお喋りするとすぐに口調が移っちゃう。まあ!なんて。
おじさんたちが丁寧にスピーディに剪定してくださり、鬱蒼としていた緑がスッキリした。
トラック山盛りの木材から、ほんのすこし枝をいただいて、部屋を飾った。
さっきまで窓の外に生えていた緑が、うちのなかで青々と雨に濡れている。
そう、この部屋はまるで外だ。
内側のはずなのに外側とつながりすぎている。
アリもダンゴムシも入ってくるし。
だけどそういうところがいい。一人になりたくてもなれないところが。
すきま風もうちの光も外の光も、ピューピュー繋がっているところが。
おじさんたちが帰ってしばらくした頃、また電話が鳴った。
「あら、こえびすさん?あなた、ちょっと、あの、、」
「なんでしょう」
とても焦っていらっしゃるので、何事かと思ったら
「あなた、ネギを植えたっておっしゃってたでしょ」
「はい」
「もしかしたら、あの方達、あなたのネギを引っこ抜いちゃったんじゃないかと思って!
心配になってお電話したのよ!」
「まあ!それでわざわざお電話くださったのですか笑」
玄関のドアを開けると、わたしのネギが一本だけ、ちょこんと残っていた。
さっきまで地面を埋め尽くしていた雑草や葉っぱたちは、きれいにお掃除されている。
ちょっと曲がったネギだけがピカピカと一本。
あの無骨なおじさんたちが、ちゃんと気づいてそっと避けてくれたのだと思うと、なんだか可笑しくて、嬉しくなった。
「ネギ、ちゃんと残してくれたみたいです!」
そう報告するとすごくホッとしてくださった。
かわいい笑
素敵な80代の大家さんでした。
沖縄、岡山とお彼岸を巡って
めちゃくちゃ世界と愛を感じて
黄金比のようなものを悟ったのに
振り返る余裕がない
帰ってきてから
心がたっぷり潤って
すごく漲って
またそのうちちゃんと整理したいのだけど
忘れないうちにできるだろうか