3年前の夏の
おなじような昼下がり
わたしは珈琲屋さんにいた
正面にいる父は新聞を読んでいて
わたしはケーキを注文して
なんども時間を確認する
待ち構えたイヤホンから
ふいに知らない曲が流れてきて
おもわず顔が熱くなる
うまくカップが持てなくて
落っことしそうになり
父がこちらをチラッと見て
怪訝な顔をする
とても鮮明に覚えてる
あまりにも驚いたのと
あまりにも嬉しかったから
あれから
わたしはほんとうに
東京に来てしまって
あのときとおなじ
くすぐったい気持ちで
今度は目の前で
おなじメロディを聴いている
なんだかとても
不思議だと思う
不満に思うことは
たくさんあるけれど
ぽかぽかする暖かさが
キャッチボールみたいに
行ったり来たりする
いまこの瞬間
わたしはつくづく
しあわせだなと
思います