世界でひとり
あなただけが
使える魔法がある
あなただけが
使える魔法
わたしのこころを
ある日はよろこびで
ある日はさびしさで
一瞬で
染めてしまう魔法
あなたの音の世界に
身を沈めるとき
わたしが映っている
あなたの瞳のなかに
あなたがわたしを
そっと抱き寄せた瞬間に
あなたが言った
なにげないひとこと
ほかのだれかへの
さりげないやさしさに
わたしの知らない
あなたの横顔に
自分でも
おどろくほどに
ふるふると揺れ動き
小さなことで傷ついたり
うれしくなったりする
だから
わたしは
あなたがとても大切で
あなたがとてもこわい
むきだしになった
ゼリー状の
こころの
奥の奥にある
やわらかいところ
まるで
中学生みたいに
自分の感情に
おっかなびっくりし
もじもじと
下を向く
扉を閉じてしまえば
傷つかずにすむけど
それでも
あなたには
開いていきたい
わたしはいままで
なにも
知らなかった
人を好きになるということが
こんなにも
熱く冷たく
鮮やかだということ
あなたにとっての
あたりまえを
もっともっと
うまく愛せますように
いつかそんなふうに
なれますように
なにも否定せずに
自分自身の
弱さを
繊細さを
うまく抱きしめて
あげられますように
わたしは
たぶん
あなたの前では
とても弱いから
どうか
すこしだけ
やさしい魔法をかけて
なにも怖くなくなるような
やさしくてあたたかい
魔法をかけて
世界でひとり
あなただけが使える
やさしい魔法をかけて
