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リスン・デザイン こえびのブログ

日々感じていることをつらつらと書きます。

ちゃんとあったよ、わたしの描きたいもの

 

 

いつだったかな

もう思い出せないほど

遠いむかし

10年以上前、

 

ギターを弾いてすてきな歌をつくる

友だちと話していたときのこと

 

 

 

 

 

「歌はどうやってでてくるの?」

と聴いたことがある

 

 

 

 

わたしは自分のことを

デザイナーという人種だと思っていたので

 

アーティストという人が

とにかく不思議で仕方なかった

 

 

 

 

彼はきょとんとして

「ギターを弾いてると出てくるんです」

というようなニュアンスのことを言い

 

わたしは

「自分の中から出てくるだなんてすごいね」

と言った

 

 

 

 

「わたしは仕事のためなら絵を描くこともあるけど

自分が描きたいものはないし」

 

実際にそうだった

描きたいものはひとつも思い浮かばなかったし

 

絵という言葉で思い出されるのは

高校時代のデッサンの重苦しさばかりで

 

 

 

 

そうしたら彼はまたきょとんとした顔をして

「えびちゃんはどうしてデザイナーになったんですか」

と言った

 

 

わたしはちょっと悩んで

 

「絵を描くのが好きだったからだよ」

と言った

 

「で、絵が描けてもお金にならないけど

デザインなら仕事になるしさ」

とも言った

 

それはいろんな人に言われてきたことばで

何度も唱えているうちに

しっかりわたしのことばになっていた

 

 

 

 

 

すると彼はやっぱり不思議な顔をして

 

「へえ、そうなんだ。ぼくは逆に人のために作るっていう感覚がないなあ」

と言い

 

 

 

 

 

すこし考えてから

「でも、えびちゃんも小さい頃は

絵を描くのが好きだったんでしょ?」

と言った

 

 

「だったら、きっといつかまた

自分の中から描きたいものが

出てきますよ!」

 

 

 

 

 

 

 

とても何気ない会話だったのに

よく覚えている

 

時間が経てば経つほど

自分の中で重みを増していったような

 

彼の予言どおり

わたしはいま

自分の中にたくさん

表現したい感情をみつけている

 

彼は元気にしているだろうか

 

 

 

 

 

 

長い時間が経って

すこしずつ

 

答え合わせのように

あのころの不思議に

つじつまがあってきた

 

 

 

 

 

 

そういえば

わたしはあのころ

アーティストという人種が

どうしても好きになれなかった

 

デザインで自己表現をする

デザイナーが嫌いだったし

自分にも許さなかった

 

どこまでも透明であることが

美しいのだと

おまえの自我なんて見たくないんだと

 

「アーティストじゃあるまいし」

「アーティストさんだからね」

 

それは

自己の極端な抑圧と

羨ましさからきたもの

だったのかもしれない

 

 

 

 

 

 

あのまま

走り続けていたら

わたしは今頃

どうなっていただろう

 

ゾッとする

 

すべてをリセットして

ゼロにならなければ

きっと抜け出せなかった

 

自分という

思考のラビリンスから

 

 

 

 

 

 

 

きみに出会って

きみの自由さに触れていくうちに

 

そうか

わたしもこのくらい

自分のペースで生きていいんだ

と思った。笑

 

わたしがいままで

出会った人のなかで

あなたがいちばん

あらゆる意味で自分勝手

 

 

 

 

もちろん頭にくる

 

また同時に

 

愛おしく思い

羨ましく思い

 

とてつもなく

そんなきみに救われている

 

 

 

 

 

 

 

魔法はすこしずつ溶けて

 

もとの場所に

戻ってきている

 

 

 

 

 

 

 

子どもみたいなこころで

ときに

きみさえ世界からいなくなるほど

 

わたしは

わたしに夢中になっている

 

 

 

 

 

 

 

ハレルヤ!

 

こんな日がくるとは

とても信じられなかった

 

わたしだけの箱庭は

誰も入ってこられない

その閉じられた場所でこそ

ようやく

 

ほっとして

花は咲きはじめる

 

 

 

 

 

 

 

きみはきっと

不思議な顔をするだろう

 

でもね

それがわたしにとって

どれほど重く

あり得ない奇跡であるか

わたしが一番よく知っているから

 

わたしはこの歓びを

たぶん一生忘れることはないだろう

 

 

 

 

 

 

 

ねえ

ちゃんとあったよ、わたしの描きたいもの

 

 

 

ちゃんとあった

 

 

 

ほんとうはずっと

そこにいた

 

 

 

 

 

部屋をきれいにしたら

探し物が見つかるように

 

 

いつだって

この部屋の

この場所で

じっと

待っていたんだね